こんな歌詞、泣かないわけがない。




いいね。すごくいいよ。泣けるしさ。

リアルで切ないし、共感して泣く人もいるんじゃないかな。





俺みたいに、悲しくて泣く人も、いるかもしれないしね。






―Whose sake are you? ―


〝君は誰のために。〟









「これ、一応できたんだけど。」



少しぶっきら棒に渡された用紙を、俺は笑顔で受け取った。
ヒョクチェは恥ずかしいのか、俯いたまま顔をあげない。



俺が作詞で、ヒョクチェが作曲。

曲を作るとき、プロデューサーにはそう言われた。
俺はどっちでも良かったんだけど、ヒョクチェは急に、「俺が作詞やりたい」と言い出して、
どっちでも良かった俺は快く承知した。




「ね、ヒョクチェ。読んでもいい?」



俯いたままのヒョクチェにそういうと、
「ああ」と小さく頷いた。




「じゃあ、俺部屋戻るから。」

「え?戻んの?」

「うん。なんか……恥ずい…」



ヒョクチェは渇いた笑い声をあげて、
ほんのり頬を赤く染めて言った。

無理をしているのか、眉は少し下がっていて、
瞳は何を映しているのか分からない。





そんなに悲しい思いをしたの?ヒョクチェ。


ねえ、誰を想って書いたの…?













俺は部屋を出ていくヒョクチェに、「あとで返しに行くから」とだけ投げかけて、
黙ってドアの開閉音を聞いた。




仕方がない。これは仕事なんだから。


俺はどうしようもなく、紙に目をやった。







曲の初めは、「君が見えなくなっていく」、だった。








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